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2-50 守りたい人

***50*** 

順調・・・・・か。嬉しいな。

朝子は産院から出ると、ゆっくりと歩き出した。今朝のいちひとを思うとくじけそうだったが、身体の中では新たな命がすくすくと育っているのだ。

初めて行ったけど、先生も看護師さんもけっこういい感じだった。ばれたら困るから、慌てて知っている人のいない遠くの産院に変えたけど、いい病院で本当によかったわ・・・。

朝子は夢見るような気持ちでバス亭に向かう道を歩いた。産院の前を通り過ぎ、隣の歯医者、次は古びた文房具屋、その隣はここ1~2年の間にできたらしいアパート。アパートの前には、若い男が3人、「雨宮有芯ってヤツ、強いかなぁ~」とか何とか話しながらたむろしている。

・・・・・・・・・・・・・・?! って、有芯が・・・何ですって?!

朝子は男達とすれ違うと、少しして立ち止まり、動揺を必死で鎮め耳をすませた。男達は朝子に聞かれているなどとは露ほども思わず話を続ける。

「写真見たらヤサ男だったぜ。強いわけあるか。俺なんて最近ジム通いの成果で、腹筋が割れてきたんだ。勝てねぇわけないよ」

「ジム通いだしたのなんて最近だろ。俺は剣道で鍛えたこの腕で!」

「お前こそ、自分がヤサ男だろうが」

「なんだって?!」

「おいおい、大事の前に仲間割れはよそうぜ。一応飛び道具もあるから、楽勝だろ」

パチン。・・・バタフライナイフ。

朝子は心で頭を抱えた。何よ、この展開・・・・・。

私は妊婦よ・・・?! 無理しちゃいけない。有芯との間にできた大切な子がお腹にいるんだもの。

でも・・・このまま見過ごすの?

有芯は、自分を犠牲にして私を守ってくれた。そのせいで、私は一時彼の人格をも狂わせた。

母として母体を大事にするか―――。

女として愛する男のために戦うか―――。

朝子は覚悟を決めた。

踵を返し、標的の男達を捉えた朝子の目は、先ほどまで優しい表情を浮かべていた人物とはとても思えないものだった。

ごめんね赤ちゃん、ちょっと我慢しててね。あなたのことも必ず守る。このまま放ってなんかおけないの。一度くらい、私が有芯を守ってみせる―――。




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